「失敗は、まだまだあります。」野口さんが今も学び続ける理由【エフルール 連載第4話】

花は、完成した作品だけを見ると、とても華やかです。
でも、その裏側では、思い通りにいかないことや、「もっとこうできたかもしれない」と振り返る瞬間が、実はたくさんあるそうです。
今回は、エフルールの野口さんに「これまで大変だったこと」について伺いました。
すると返ってきたのは、意外にも「失敗は今でもあります」という言葉でした。
目次
忙しい季節は、夢の中でも仕事をしている

花屋には、一年の中でも特に忙しい時期があります。
お正月や母の日、クリスマスなど、花を贈る機会が増える季節です。
特に12月は、制作の依頼が集中するだけでなく、通常の仕事も並行して進めなければならないため、一日があっという間に過ぎていくそうです。
朝早くから市場へ向かい、仕入れを終え、作品を作り、お客様のもとへ届ける。その合間にも次の準備や打ち合わせが入り、気づけば夜になっていることも珍しくありません。
そんな日々が続くと、体は休んでいても頭は休まらないそうです。
「人間、毎日の仕事が詰まり過ぎると、夢の中でも仕事をするんですね。」
そう話す野口さん。
夢の中でも花を生けていたり、「あの注文はこうした方がいいかな」と考えていたりすることがあるそうです。
思わず笑ってしまう話ですが、それだけ一つひとつの仕事と真剣に向き合っているからこその出来事なのかもしれません。
「喜んでもらえた」で終わらせない

これまで数え切れないほどの寄せ植えやフラワーアレンジメントを届けてきた野口さん。
お客様から「ありがとう」「素敵だったよ」と声をかけてもらうことも少なくありません。
それでも、
「あとから見返すと、反省することは今でもあります。」
と話します。
花の仕事には、これが正解という形がありません。
だからこそ、自分では「もっとこうできたかもしれない」と感じることがあるそうです。
もちろん、お客様には喜んでいただけた作品です。
それでも、「次はもっと良くできるはず」と思ってしまう。
その姿勢は、仕事に厳しいというより、「もっと喜んでもらいたい」という気持ちの表れなのだと感じました。
一つの仕事を終えて終わりではなく、必ず振り返る。
その積み重ねが、少しずつ今のエフルールをつくってきたのでしょう。
「もっと上手くなりたい」は今も変わらない

では、その反省をどう次につなげているのでしょうか。
野口さんの答えは、とてもシンプルでした。
「とにかく練習です。」
特別な近道はないそうです。
頭の中で思い描いた作品を、思い通りに形にできるようになるまで繰り返し作る。
それを何度も積み重ねるしかないと言います。
さらに、作品づくりのヒントは花屋さんだけにあるわけではありません。
休日には高尾山などへ足を運び、季節ごとの植物や木々の色合い、自然の景色を眺めることもあるそうです。
自然の中には、人がつくろうとしてもつくれない色の組み合わせや形があります。
そうした景色を見ながら、「こんな雰囲気を作品にも取り入れられないかな」と考えることもあるそうです。
「まだまだ勉強中です。」
そう話す野口さんからは、長年経験を積んできた職人というより、今も学び続けている一人の花好き、そんな印象を受けました。
「いい作品」は、人それぞれ違う

取材をしていて、一番印象に残った言葉があります。
「自分が良いと思った作品が、必ずしもお客様にとって良い作品とは限らない。」
花には、決まった正解がありません。
好きな色も、人によって違う。
好きな雰囲気も違う。
飾る場所も、贈る相手も、一つとして同じものはありません。
だから野口さんは、自分の感性だけで作品を作ることはしないそうです。
まずは相手の話を聞く。
どんな場面で使うのか。
どんな気持ちを届けたいのか。
どんな人に贈るのか。
その背景を知って初めて、作品づくりが始まるといいます。
花を生ける技術だけではなく、「相手を知ろうとする姿勢」。
それもまた、野口さんの仕事を支えている大切な技術なのだと思いました。
完成ではなく、成長の途中
「もう十分ですね。」
そんなふうに声をかけられることもあるそうです。
でも野口さん自身は、そう思ったことは一度もないと言います。
もっと上手くなりたい。
もっと相手に喜んでもらいたい。
もっと思い描いた作品をつくれるようになりたい。
その気持ちは、独立した頃から今まで変わっていないそうです。
だから反省もするし、練習もする。
夢の中で仕事をしてしまうほど考え続けることもある。
「花を扱う仕事」というより、「人に喜んでもらう仕事」。
そう考えているからこそ、完成というゴールはなく、今も成長の途中なのかもしれません。
次回予告
仕事の話を聞いていると、とても真面目で職人気質な野口さん。
でも、お話をしていると、思わず笑ってしまうような一面もたくさんありました。
次回は、仕事を少し離れて、野口さんの素顔に迫ります。
地域の人だからこそ親しみを感じられる、そんなエピソードをお届けします。
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