「今年の浜なしは120点!」23歳で梨づくりを受け継いだ、浜農家ヒラモトの夏

浜なしを仕分けしているところ

横浜の夏の味覚といえば、「浜なし」。

一般的な梨の品種名ではなく、横浜市内で生産され、一定の基準を満たした梨につけられるブランド名です。

ちょうど浜なしが旬を迎えた8月、羽沢町にある「浜農家ヒラモト」さんを訪ねました。

畑では浜なしの収穫に加えて、ナスやトマト、オクラ、キュウリなどの夏野菜も最盛期。

朝早くから家族総出で作業が続きます。

そんな忙しい時期にお話を聞かせてくれたのが、涼馬さんと春香さんご夫婦。

現在23歳の涼馬さんは、今年から本格的に浜なしの栽培を引き継ぎました。

今年の梨、おいしくできたんですよ

そう話す二人に、浜なしづくりのこと、3世代で営む農家の毎日、そして若い二人が思い描く農業について伺いました。

3世代、それぞれの「得意」がある農家

収穫したトウモロコシ

浜農家ヒラモトさんでは、祖父母、両親、そして春香さん・涼馬さん夫婦の3世代が農業に携わっています。

面白いのは、家族みんなが同じ作物を作っているわけではないこと。

それぞれに好きなもの、得意なものがあり、自然と“担当”が分かれています。

おじいちゃんの輝雄さんは、昨年まで梨を中心に栽培し、現在もぶどうを担当。

ニンジンや玉ねぎ、ジャガイモ、大根、白菜なども少量ずつ、多品目を育てています。

お父さんの正治さんが得意なのは、トウモロコシ。

羽沢で有名なキャベツやブロッコリーもお父さんの担当。

収穫したトウモロコシ

特にトウモロコシは、大きく立派な実ができると評判で、ほかの農家さんが買いに来ることもあるそうです。

父はすごく勉強熱心なんです。どうしたらうまく育つか、いろいろ試していて

そこで得た栽培の工夫や知識も、自分だけのものにせず、仲間の農家さんたちと惜しみなく共有しているそうです。

作業中にもほかの農家さんとよく話しているそうで、春香さん曰く「おしゃべり好きで社交的」。

ちなみに正治さんも農家の出身で、横浜市旭区からお婿さんとしてヒラモト家にやってきました。

そして今度は、その娘である春香さんのもとへ涼馬さんが。

世代を越えて、外から新しい人を迎えながら農業が受け継がれているのも、ヒラモト家の面白いところです。

農業を学びに来た青年が、ヒラモト家の一員に

収穫した梨を運ぶところ

涼馬さんは東京都町田市出身。

農家の生まれではありません。

普通科の高校を卒業した後、農業を仕事にしたいと神奈川県立かながわ農業アカデミーへ進みました。

在学中、実習先となったのが浜農家ヒラモトさんでした。

1年間、週に2~3回ほど畑へ通い、農作業を経験。

卒業後、そのままヒラモトさんへ就農することになりました。

一方、ヒラモト家の次女・春香さんも、同じかながわ農業アカデミーの卒業生で、涼馬さんの4つ先輩です。

卒業後は家業を手伝いながら、人手が足りないからと声をかけられ、母校で週に1~2回、先生として実習を担当していました。

教室で勉強を教えるというより、学生たちと一緒に外へ出て農作業をする先生です。

そこで出会ったのが、学生だった涼馬さん。

涼馬さんが就農した直後から交際が始まり、2024年に結婚しました。

現在は1歳8か月の男の子を育てながら農業に取り組み、10月には第2子も誕生予定です。

実習時代からヒラモト家へ通っていた涼馬さん。

結婚して家族になってからも、「今まで通り」の雰囲気で温かく迎えられているそうです。

年下ですけど、優しくて頼りになります

と春香さん。

浜なしの仕分けをしているところ

毎日、家でも畑でも顔を合わせる二人。

喧嘩もしますよ(笑)

と言いながら顔を見合わせる様子からも、二人の距離の近さが伝わってきました。

23歳、今年から浜なしを引き継ぐ

浜なしの仕分けをしているところ

ヒラモトさんの浜なしは、昨年まで主におじいちゃんの輝雄さんが栽培していました。

今年、その仕事を本格的に引き継いだのが涼馬さんです。

研修時代を含めれば、梨づくりは3シーズン目。

それでも、自分が中心となって剪定から受粉、摘果、そして収穫までを行うのは今年が初めてです。

自分としては60点くらいです。まだ改善できるところがあると思っています

そう振り返る涼馬さんですが、今年の梨の出来を尋ねると――。

梨自体はとてもあまく、おいしくできたので120点です!

60点と120点。

この差が、なんとも印象的でした。

自分の仕事にはまだまだ改善の余地がある。

でも、今年実った梨には自信がある。

実際、今年は甘みもしっかりあり、とてもおいしい梨に育ったそうです。

昨年の悔しさを、今年の工夫につなげる

浜なしの虫害
シンクイムシの被害は今年は少ないそう

農業は、毎年同じように作れば同じものができる仕事ではありません。

天候も違えば、病害虫の発生も変わります。

昨年、ヒラモトさんの梨はシンクイムシによる大きな被害を受けました。

収穫できるはずだった梨の多くが被害に遭い、悔しい結果に。

そこで今年は対策を工夫。

その成果もあって、虫による被害はほとんどなかったそうです。

また、梨は強い日差しなどによって果肉に障害が起こることもあるため、枝や葉をできるだけ残すなど、畑の状態を見ながら育てています。

うまくいかなかったら、原因を考えて、翌年はやり方を変えてみる。

だんだんうまくいくようになるのが楽しいです

涼馬さんが農業に感じている面白さは、そんな試行錯誤の中にあるようです。

幸水の次にも、おいしい梨が待っています

取材時に作業場に並んでいたのは、みずみずしく甘い「幸水」。

浜なしというと幸水を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、ヒラモトさんでは、このあとも品種が次々と変わります。

豊水、秀玉、あきづきと続き、9月中旬ごろまでさまざまな味わいを楽しめる予定です。

中でも、ぜひ食べてみてほしいと教えてくれたのが「秀玉(しゅうぎょく)」。

幸水と菊水を親に持つ黄みがかった梨で、甘みが強い一方、栽培の難しさもあり、生産量が比較的少ない品種です。

あきづき」は、新高と豊水を掛け合わせたものに、さらに幸水を交配して生まれた品種。

人気の梨の特徴を受け継いだ、こちらも楽しみな品種です。

店頭で見かけたら、品種による味や食感の違いを楽しんでみるのもよさそうです。

朝5時から始まる、夏の農家の一日

夏野菜

夏のヒラモト家の朝は早く、涼馬さんたちは朝5時には畑へ。

ナスやトマト、ピーマン、オクラ、キュウリ、インゲン、唐辛子など、その日に出す夏野菜を収穫します。

暑くなる前の8時ごろまでに収穫を終え、そこから仕分けや袋詰め。

9時には販売できるよう準備を整えます。

梨の収穫が始まると、さらに大忙し。

午前中に梨を収穫し、午後は一つひとつ重さを量ってサイズごとに分け、袋詰めしていきます。

直売所に用意するのは、2キロ入りの袋を30袋ほど。

直売所は春香さんと涼馬さん夫婦が担当しています。

一方、メルカートかながわなどへの出荷を主に担当するのは、お母さんの聖美さんです。

「健康にいい」と聞いたら、作ってみるお母さん

聖美さん自身も、空心菜(エンサイ)、モロヘイヤ、赤しそ、菊芋、ルバーブなどを栽培しています。

健康にいいと聞くと、すぐ作るんです(笑)

と春香さん。

新しい野菜にもどんどん挑戦するタイプなのだそう。

夫・正治さんの収穫を手伝い、出荷を担当し、自分の野菜も育て、さらに春香さん夫婦が直売所に立つときには孫のお世話も。

本当にスーパーウーマンです。休まず、いつも何か仕事を見つけて動いています

そして、おばあちゃんの三重子さんも現役です。

収穫した野菜を洗ったり、仕分けたり、袋に詰めたりする「調整」の作業を担当しています。

昨年までは梨の作業にも加わっていましたが、足腰を痛めたことから、今年は若い世代へバトンタッチしました。

畑に出る人だけでなく、その後の調整、袋詰め、出荷、販売、そして子守まで。

家族みんなの仕事がつながって、直売所に並ぶ一袋の野菜や梨ができています。

「ほかでやっていないこと」を試してみたい

浜なしの仕分けをしているところ

春香さんが力を入れているのは夏野菜。

農家の娘たちが集まる「農娘会(のうむすかい)」にも参加し、同世代の農家とのつながりを大切にしています。

これまでは同世代があまりいなかったそうですが、最近は若いメンバーも増えてきたそう。

春香さん自身も、ただ毎年同じように作るのではなく、

ほかでやっていないことを工夫して、成果が出るのが好き

と話します。

例えばトマト。

できるだけ長い期間収穫できるよう、ハウス栽培の方法を取り入れてみたり、支柱の立て方を変えたり。

どうすればもっとよく育つのか、毎年試しながら自分なりの方法を探しています。

涼馬さんが好きなのは、ナス。

作りやすいし、工夫のしがいがあります

そして、果物ならやっぱり梨。

食べるのも、作るのも好きだそうです。

やっていくうちに、だんだんうまくできるようになって。それが楽しいです

夫婦それぞれに担当する作物は違っても、「考えて、試して、結果が出ることが楽しい」というところは、よく似ているのかもしれません。

農家だから休めない? 休む日も自分たちでつくる

「農家って、お休みはあるんですか?」

そんな質問をすると、

やろうと思えば、仕事はいくらでもあります(笑)

農作業は、収穫だけではありません。

次の作物の準備、手入れ、片付け……一年を通して何かしら仕事があります。

それでも、収穫時期を調整したり、前日までに作業を終わらせたりすれば、休みをつくることはできるそうです。

最近は家族で山梨へ2泊の旅行にも。

以前には岡山や四国へ出かけたこともあり、ご両親も九州旅行を楽しむなど、ヒラモト家は旅行好き。

行きたいと思ったら、その前に全部終わるように段取りします!(笑)

農業と子育てをしながら、家族で過ごす時間も大切にしています。

若い夫婦がつなぐ、ヒラモトさんのこれから

浜農家ヒラモトさんの庭

取材をしていて感じたのは、「受け継ぐ」という言葉から想像していたよりも、ずっと自由で明るい農家の姿でした。

おじいちゃんが長年育ててきた梨を、23歳の涼馬さんが引き継ぐ。

お父さんはトウモロコシ、お母さんは新しい野菜に挑戦し、春香さんは夏野菜を工夫しながら育てる。

おばあちゃんは、みんなが収穫した野菜を商品として送り出すための作業を支えています。

昔から続いてきたものを大切にしながら、それぞれが好きなもの、得意なことに取り組み、新しい方法も試してみる。

そんな家族だからこそ、次の世代へ自然と農業がつながっていくのかもしれません。

最後に、読者のみなさんへ一言ずつお願いしました。

今年から本格的に浜なしの生産を引き継ぎました。おいしくできたので、ぜひ食べてください!

と涼馬さん。

春香さんからは、

若い夫婦で頑張っています。直売所は二人で担当していますので、応援よろしくお願いします!

今年の浜なしは、9月中旬ごろまで品種を変えながら続く予定です。

幸水、豊水、秀玉、あきづき。

直売所で若い二人に会えたら、「今日は何がおすすめですか?」と聞いてみるのも楽しそうですね。

浜農家ヒラモト 梨直売所

住所:横浜市旭区今宿南町1833-1

営業:梨の季節のみ、不定期オープン

時間:朝9時~売り切れまで

販売日はInstagramでお知らせしています。

instagram:https://www.instagram.com/hamanouka.hiramoto/

※天候や収穫状況などにより、販売日や販売量が変わる場合があります。

神大寺周辺なら「メルカートかながわ」でも

浜農家ヒラモトさんの農産物は、直売のほか「メルカートかながわ」などにも出荷されています。

メルカートかながわでは、ヒラモトさん以外の農家さんが育てた浜なしも取り扱っています。

JA横浜「ハマッ子」直売所 メルカートかながわ店

住所:横浜市神奈川区神大寺2-19-5

電話:045-481-3913

営業時間:8:30~17:00

定休日:第2火曜日・年末年始ほか

HP:https://ja-yokohama.or.jp/tenpo/mercart_kanagawa

ヒラモトさんの浜なしは朝から、ほかの農家さんの浜なしは順次入荷、販売開始は11時ごろ~だそうです。

地元・神大寺で横浜の旬の味を楽しみたい方は、こちらものぞいてみてください。

※入荷があった日は、目安として赤い「浜なし」の旗が立っていますよ。

この記事を書いたひと

あっきー

神奈川区在住。22,20歳の子、夫の4人暮らし。おいしいものやたのしいことなどのオススメ情報をオススメするのが好きです。

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