「好きだからこそ、悩むこともある。」それでも野口さんが花の仕事を続ける理由【エフルール 連載第6話】

エフルールさん提供の花籠

「好きなことを仕事にする」

なんだか、とても楽しそうな響きがあります。

好きなことなら、毎日楽しく働けそう。
そんなふうに思ってしまいますが、実際はきっと、そんなに単純ではないのでしょう。

これまでエフルールの野口さんにお話を伺ってきても、失敗したことや、今も技術を磨き続けていることなど、決して「好きだから楽しい」だけではない姿が見えてきました。

それでも、野口さんは花の仕事を続けています。

今回はあらためて、野口さんに聞いてみました。

「この仕事の、どんなところが好きですか?」

一番は、人に喜んでもらえること

結婚式用の装花

野口さんが最初に挙げたのは、

「人に喜んでいただけるところが一番ですね」

ということでした。

これは、これまでの連載を読んできた方なら「やっぱり」と思うかもしれません。

結婚式という大切な日の装花を任せてもらったこと。

フラワーアレンジメントの時間を、毎月楽しみにしてくださっている方がいること。

前回のお話にも、野口さんが「人に喜んでもらえること」を大切にしている様子が何度も出てきました。

でも、好きなところはそれだけではありません。

季節の移ろいを、花を通して感じられること。

作品を通して、自分自身を表現できること。

そして、創作について常に学び続けられること。

一つの「好き」ではなく、いくつもの面白さがあるからこそ、長く続けられる仕事なのかもしれません。

「評価された」と実感できた瞬間

では、「やっぱりこの仕事が好きだな」と感じるのはどんなときなのでしょう。

野口さんの答えは、とても具体的でした。

「お客様に再評価された時です」

一度仕事をしたお客様から、もう一度声をかけてもらう。

特にイベントの装花など、大切な場面の仕事を再び任せてもらえたときには、「評価していただけている」と実感するそうです。

最近も、お祭りのフォトスペースの装飾を依頼されたのだとか。

「大変嬉しい瞬間でした」

と野口さん。

仕事を終えたその場で「素敵ですね」と言ってもらえるのも、もちろんうれしい。

でも、その後もう一度「お願いしたい」と声をかけてもらえることには、また違ったうれしさがあるのかもしれません。

私自身も仕事をしていて、一度関わった方からまた声をかけてもらえると、やっぱりちょっとうれしくなります。

「前の仕事、ちゃんと届いていたんだな」

そんなふうに、あとから答え合わせをもらったような気持ちになるからでしょうか。

野口さんにとっても、次の依頼は、自分の仕事への一つの答えになっているのかもしれません。

花に触れる時間は「癒し」であり「苦しみ」でもある

花をいける野口さん

そして今回、個人的に一番印象に残ったのが、この言葉でした。

「癒しであり、時には苦しみでもあります」

花に触れ、アレンジメントをつくる時間。

てっきり野口さんにとっては、ただただ心地よい時間なのかなと思っていました。

でも、そうではないそうです。

もちろん、楽しさを感じることの方が多い。

一方で、作品の構成がうまくまとまらないときには、

「生みの苦しみのようなものがあります」

と野口さん。

好きなことでも、うまくいかないときは苦しい。

むしろ好きだからこそ、「もっとこうしたい」が出てきて、簡単には終われないのかもしれません。

花を扱う仕事というと、きれいな花に囲まれた華やかな世界をつい想像してしまいます。

けれど、その裏側には一つの作品をつくるために悩んだり、考えたりする時間もある。

その両方を含めて「花をつくる時間」なのだという言葉が、なんだか妙に心に残りました。

根底には「自分が楽しめるから」

最後に、少し難しい質問をしてみました。

「大変なこともありながら、この仕事を続けている一番の理由は何だと思いますか?」

野口さん自身も、

「とても難しい質問ですね」

と考えたそうです。

そして出てきた答えは、とてもシンプルでした。

「一番の理由は、自分が楽しめるからだと思います」

家族のため。
地域社会のため。

そうした思いも、もちろんあるそうです。

でも、花を扱う今の仕事は、

自分自身の楽しさや充実感のためでもある。

誰かのためだけではなく、自分も楽しいから続けている。

前回まで、人に喜んでもらうことを大切にする野口さんの姿をたくさん見てきたからこそ、この言葉がなんだかいいなと思いました。

楽しさもある。
うまくいかなくて苦しい日もある。

それでもまた花に触れ、考え、つくっていく。

「好きな仕事」って、ずっと楽しい仕事というより、苦しむことがあっても、やっぱり戻ってきたくなる仕事なのかもしれません。

野口さんのお話を聞きながら、そんなことを思いました。

次回予告

ここまで6回にわたって、野口さんがこの仕事を始めたきっかけや、仕事の裏側、お客様とのエピソードなどを伺ってきました。

次回からは、もう少し角度を変えてエフルールの仕事を覗いてみます。

実はエフルールは、花束やフラワーアレンジメントをつくるだけではありません。

施設や個人宅の庭園の植栽管理なども行っているそう。

「店舗を持たない花屋」だからこそ、どんな仕事をしているのでしょうか。

次回は、私たちが思い浮かべる「花屋さん」のイメージから少し飛び出して、エフルールの仕事の幅を探ってみます。

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