伝えるだけでは届かない。横浜かもめスポーツクラブの「じつは大変なこと」【かもめSC連載第4話】

前回の記事では、横浜かもめスポーツクラブの普段の練習や、活動の裏側についてお届けしました。
時間になると選手たちが自然とウォーミングアップを始め、その日の課題に合わせてトレーニングに入っていく。
その何気ない流れの中にも、子どもたちを飽きさせない工夫や、一人ひとりに合わせた声かけがありました。
では、そんな日々の指導の中で、コーチたちはどんな難しさを感じているのでしょうか。
第4回のテーマは、「じつは大変なこと」。
今回は、横浜かもめSCでコーチを務める石崎コーチの言葉をもとに、サッカーを教えることの難しさと、その中で大切にしていることを紹介します。
目次
GKコーチから、チーム全体を見る立場へ

石崎コーチは、もともとGKコーチとして横浜かもめSCに加わりました。
GK、つまりゴールキーパーは、サッカーの中でも少し特殊なポジションです。
練習も少人数で行うことが多く、2〜3人、多くても4〜5人ほどの小さなグループで動くことが多いそうです。
人数が少ない分、一人ひとりの動きやクセ、細かな部分まで目を向けることができます。
その子に合わせて、じっくり見ることができる。
けれど現在は、GKだけでなく、グループ全体を指導する機会も増えています。
そこに、石崎コーチが最初に感じた大きな難しさがありました。
少人数を見ることと、チーム全体を見ること。
同じサッカーの指導でも、必要な目の配り方や声のかけ方は大きく変わります。
一人ひとり性格も違えば、得意なことも違う。
同じ言葉をかけても、受け取り方はそれぞれ違う。
そのギャップが、石崎コーチにとって一番大変に感じたことだったそうです。
思い通りに進まないこともある

練習には、もちろん狙いがあります。
今日はここを意識してほしい。
このプレーをできるようになってほしい。
試合でこういう場面につなげてほしい。
コーチはそうした意図を持って、トレーニングを組み立てています。
でも、実際には思い通りに進まないこともあります。
想定していたように練習が進まなかったり、試合でトレーニングの成果がうまく出なかったり。
もちろん、すべてが予定通りにいくわけではありません。
子どもたち相手の活動ですし、サッカーは相手のあるスポーツです。
それでも石崎コーチは、そんなときに「もっと自分がうまくできたのではないか」と感じることがあるそうです。
この言葉には、少し胸に残るものがあります。
子どもたちのせいにするのではなく、まず自分の伝え方や関わり方を振り返る。
そこに、石崎コーチの誠実さが表れているように感じます。
「伝える」と「伝わる」は違う

石崎コーチが指導の中で感じている大きなテーマがあります。
それは、「伝えるよりも、伝わることが大切」ということです。
コーチが同じ言葉をかけても、ある選手にはすっと届くことがあります。
一方で、別の選手には少し引っかかったまま、腑に落ちていないように見えることもあります。
言ったから伝わった、とは限らない。
これはサッカーに限らず、子どもと関わる大人なら、どこかで感じたことがあるかもしれません。
「ちゃんと言ったのに」ではなく、「本当に伝わっているだろうか」と考える。
その違いは、とても大きい気がします。
石崎コーチにとって、この部分は難しさであり、同時に指導の面白さでもあるそうです。
そして、今でも悩むことはたくさんあると言います。
すべて分かったように語らないところも、きっと現場に立ち続けているコーチらしさなのだと思います。
まず、その子を知ることから
では、その難しさをどう乗り越えてきたのでしょうか。
石崎コーチが大切にしているのは、選手一人ひとりのことをよく知ることです。
それはサッカーの技術だけではありません。
どんな性格なのか。
どんな言葉に反応するのか。
今、どんなことを考えているのか。
そうした部分を知るために、普段からのコミュニケーションを大切にしているそうです。
練習中だけでなく、何気ない会話の中で見えてくることもあります。
挨拶に加えて、少しだけ声をかける。
話しづらい雰囲気にならないように、コーチの方から関わっていく。
「最近どう?」「学校どうだった?」「今日元気だね」
そんな他愛のないやりとりの中に、実は大事なヒントが隠れているのかもしれません。
石崎コーチは、結局は人と人の関わりだと感じているそうです。
サッカーを教える前に、まずその子を知る。
そこから指導が始まっているのだと思います。
自分の経験だけでは届かない
石崎コーチ自身も、学生時代からサッカーをしてきました。
だからこそ、自分の経験や感覚をもとに伝えたくなることもあります。
「自分はこうやってきた」「こうすれば分かるはず」
そう思うことも、きっと自然なことです。
でも、それだけでは伝わらない選手もいます。
自分には合っていたやり方でも、目の前の子に合うとは限らない。
だからこそ、選手一人ひとりに合わせたアプローチの引き出しを増やしていく必要がある。
石崎コーチは、そのためには自分自身も学び続けることが大切だと感じているそうです。
指導者でありながら、選手たちから学ばせてもらうこともたくさんある。
その姿勢が、横浜かもめSCのあたたかさにつながっているのかもしれません。
大変さの中にある、まっすぐな思い

今回の話は、華やかな成功談ではありません。
練習が思い通りにいかないこと。
言葉が届かないこと。
チーム全体を見る難しさ。
自分の力不足を感じる瞬間。
そうした、外からは見えにくい大変さの話でした。
でも、その一つひとつに向き合いながら、石崎コーチは選手たちのことを知ろうとしています。
どうしたらこの子に伝わるのか。
どうしたら前向きに取り組めるのか。
どうしたら成長につながるのか。
その答えを、日々の関わりの中で探しているのだと思います。
地域のグラウンドで子どもたちがサッカーをしている姿を見ると、ついプレーや試合結果に目が向きがちです。
でもその裏側には、子どもたち一人ひとりと向き合うコーチたちの試行錯誤があります。
次回につづく
今回は、横浜かもめSCの「じつは大変なこと」について紹介しました。
では、そうした日々の関わりの中で、子どもたちはどんなふうに変わっていくのでしょうか。
できなかったことができるようになる。少しずつ自信を持てるようになる。仲間との関わり方が変わっていく。
次回は、「成長のエピソード」をテーマにお届けします。
横浜かもめSCに通う中で見えてくる、子どもたちの変化に触れていきます。
横浜かもめスポーツクラブ
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